大丈夫。ずっと、ここにいるから。





大丈夫、ほど信じられない言葉はないと、知っていたけれど。
ずっと、なんてないんだと、思い知らされてしまったけど。
それでも、僕は。










「…3年…」



タルルと最後に会った日から、3年の月日が経った。
あっという間だった気もするし、長かった気もする。
でも、心のどこかに穴が空いたような感覚だけは確かで。


僕たちは訓練所の同期生だった。
いつだって一緒にいて、共に泣き、笑い、歩んできた。
あまりにも無知だった僕たち。
あの頃交わした約束、君は覚えているのかな。



ずっと一緒にいようね、約束だよ。



幼さゆえの無知は罪だとさえ思う。
何の躊躇いもなく、叶わない幻想を信じ、口にできるから。

現実はいつだって無情だ。
タルルは前線兵としてガルル小隊に配属された。
僕は、本星のオペレータになることになった。
『ずっと』なんてないと知ったのは、このときだった。

でも、さよならにはしない。
お別れになんか、させない。
だから、君に言ったね。



大丈夫。ずっと、ここにいるから。



『大丈夫』ほど、信じられない言葉はないと、知っていたけれど。
『ずっと』なんてないんだと、思い知らされてしまったけど。
それでも僕は、他の誰でもない、タルルを信じた。

神様なんか信じない。渡る世間は鬼と悪魔が手招きしてる。
いつだって現実は残酷で非情で、僕らを冷たい刃で斬り付ける。
けど、君といるときの暖かさは、すべてを包んでくれるから。
僕たちの絆は、約束は、氷の剱になんか負けないと、信じたんだ。

君は驚いた顔をして、でもすぐに笑顔になって。
当たり前ッスよ、いなくなってたら怒るッス、って。
それだけで、十分だったよ。



僕は今もここにいる。
3年だよ?長いよ。髪、だいぶ伸びちゃったよ。
下手したらクルル曹長くらいあるかもしれないなぁ。
もっとも、僕はあんなにさらさらの綺麗な髪じゃないけどね。
切ろうとは思うんだけど、タルルのこと考えてるうちに忘れててさ。
早く帰って来いよー。髪切りたいんだから。
これ以上は、待ちくたびれちゃうよ。

…本当、早く帰ってきてよ。
タルルの顔が見たい。タルルの声が聞きたい。
君に触れたい。君に触れてほしい。
タルルに、会いたい。

君が嘘つきじゃないのは、知ってる。
でも、こんなに長い間会えないと…やっぱり、少し不安になってしまうよ。
ねぇ、早く帰ってきて。こんな不安、馬鹿みたいだって言って笑い飛ばして。

僕、この3年の間に、決めたことがあるんだ。
それを君に伝えたい。

だから…ねぇ、


「タルル」


呼んだ名前、君に届けばいいのに。


「呼んだッスか?」


ばっ、と勢いよく振り返る。

あぁ。
あぁ。
あぁ。

誰か夢じゃないと言って。
誰か幻じゃないと言って。


「ただいま、ッス」


照れたように、申し訳なさそうに、少しくすぐったそうに。
笑う、きみ。

言いたいことはたくさんあるのに。
数え切れないくらい、あふれそうなくらい、あるのに。
頭も心もいっぱいいっぱいで、言葉にならない。

それでも、足が動く。
君に向かって、走る。


「タルル…っ!」


身体ごとぶつかるように、抱きつく。
タルルがいる。
ここにいる。
約束が、絆が、ここにある。


「う、わ、!?」
「僕、待ってたんだよ?3年間、ずっと…ここで!」


自然、腕に力がこもる。
暖かい。
昔からずっと傍にあった温もり。
遠くに行ってしまっていた温もり。
氷の刃を溶かしてくれる…僕の、ひかり。


「髪、こんな伸びたけど、切る暇ないほど、タルルのこと考えてた」
「うん」
「ずっとずっと、…会いたかった」
「…うん」
「だから…」


僕を柔らかく包んでくれる君の腕が、あまりにも優しくて。
孤独を満たしてくれる君の声が、あまりに愛しくて。
溢れた涙が、止まらないよ。


「…おかえり、なさい」


声が掠れて上手く言えなかったけれど、タルルは、分かってくれるから。
うん、って、頭を撫でて。


「待たせてごめんッス、。…でも、これからはずっと一緒ッスよ」
「…え?」
「さっきの会議で、、正式にガルル小隊に配属になったんス」
「ほ、本当…!?」


一緒に?ずっと?
もう、待たなくていいの?
夢みたいだよ。
夢じゃないよね?


「う…っわ、嬉しい…っ!」
「へへっ、オイラも嬉しいッス」

「だって、もうこんな風に待たせて、泣かせることもなくなるッスから」


最高の笑顔。
つられて笑ってしまう。
本当に、君には敵わない、な。


「これで髪、切れるや」
「切っちゃうんスか?もったいない」
「何で?」
「髪長いほうが可愛いッスもん」


顔が赤くなるのが分かる。
…ズルいぞ、この天然スケコマシめ。
嬉しいじゃないか。
あぁ、ダメだ。伝えてしまえ。――僕の想いを。


「好きだよ。タルル」
「…オイラも、ッス」


顔が近づく。
もう、待たないよ。

――だいすき。















03.君待つ時間に















fin




atogaki
 10000HIT記念フリー夢小説。
 音羽様リクで、タルル甘夢です。
 主人公の一人称が僕ですが別にBL夢ではありませぬぞッ!?
 タルル夢=軍属主人公=ボクっ子(゚∀゚*)vv というネ申のお告げがあったもので(待
 個人的にはだいぶ甘めのつもりですが、いかがでしたでしょうか?(ドキドキ
 お持ち帰りは自由ですが、サイト掲載の際にはご一報あれ( ´ω`)ノ

Title by TV