失ったなら、私はきっと追うだろう。
求めて止まない、お前の姿を――。
「なぁ、由良」
「ん?」
彼が、描いた絵を自らの能力で消し去るのを眺めながら呟く。
様々な色が宙に舞い、そして次の瞬間に消えていく光景。
それはあるいは夢のようでもあったが、確かな現実だった。
「――私が能力者ではなかったとしたら、お前は私を殺すのだろうな」
由良がニンゲンを殺していく光景を目にしたことがある。
しゃぼん玉が弾けるたびに、ニンゲンたちのパーツが吹き飛んでいって。
最後に残ったのは…紅い血の霧と、錆びた鉄の臭いと、彼自身。
凄惨――というには、美しすぎた。
紅を纏う彼の姿は、神秘的ですらあったから。
「は?」
「もしも、の話だよ」
私たちは『ニンゲン』ではない。
死を齎すモノによって死を齎すチカラを得た存在。能力者。
個々の望みや性質によって変わる、特異な能力を持つ者。
私たちの身体能力は、ニンゲンのそれをはるかに超えている。
大きな傷を負っても、それが癒えるまでに大した時間はかからない。
けれど、完全に『ニンゲン』でなくなったわけでは、ない。
外見は変わらない。身体構造も変わらない。
心臓を貫かれれば死ぬ。頭を吹き飛ばされれば死ぬ。
「私は…由良に殺されるのなら、構わない」
多くの能力者は、ニンゲンを殺すことを躊躇わない。
元は同族だったとしても、今は違うのだと言って。
自分たちは選ばれたのだと、言って。
その考え方こそが『ニンゲン』のモノなのだと気付かずに。
私は、能力者たちのそういう考え方を好ましくは思わない。
自分が能力者になり、そういう思考の存在を知ったとき、激しく嫌悪した。
己が能力者であることに吐き気を催し、死さえ考えた。
そんなときに出会ったのが、由良だった。
「…最初は、お前が嫌いだったよ」
「あぁ、それは感じてたな。、すっごいオレのこと嫌いだーってオーラ出してたから」
典型的な『能力者』である、由良。
気に入らない奴は殺す、そんな享楽殺人者。
にも拘らず、その能力は美しかった。
私たちの能力は、その心を映す鏡。
由良の心の本質を知りたいと思うようになった。
あるいは、そのアンバランスさに惹かれたのかもしれない。
「けれど今は、お前の傍にいたいと思うようになったんだ」
「…」
「たとえ眼を奪われようと、お前の姿を探すだろう。
たとえ耳を千切られようと、お前の声を聞くだろう。
たとえ喉が潰れようと、お前の名を呼ぶだろう。
たとえ…肉体を失おうとも、お前の面影を焦がれ、彷徨うだろう」
「…変なの」
「全く、自分でもそう思うよ」
ふぅ、と、軽く溜め息をつく。
いつの間に彼にここまで入れ込んだのか、自分でも分からない。
それとも彼を知りたいと思ったときには、もう戻れなくなっていたのか。
「私は…」
「オレさぁ」
「?」
「…きっと、ずっとのこと、探してた。
出逢うずっと前から――逢いたいと、思ってたんだ。
だから、初めて会ったとき、嬉しかった。やっと逢えたって、思った」
「――フフ、おかしな話だな」
「お互い様、じゃん?」
顔を見合わせて、笑う。
何の変哲も無いこの時間が、幸せだと思った。
「オレさ、のコト守るから。面影なんかじゃなく、ずっと傍にいるから」
「そう、願いたいね」
たとえ死んだとしても、決して忘れないさ。
永久に、その面影に焦がれて――。
04.永久に焦がれる面影
fin
atogaki
10000HIT記念フリー夢小説。
蓮花様リク、アライブ由良夢でしたー。
お題指定がなかったのでこのお題にしてしまいましたけどいいですかね…?
シリアス…とほのぼのの中間?かな。甘くもないし。
あー、1番お題に沿ったものが書けたかもしれない(笑
お持ち帰りは自由ですが、サイト掲載の際にはご一報あれ( ´ω`)ノ
Title by TV