最初っから、ハッピィエンドなんて期待しちゃいない。










恋愛挫折症










私ことは、今、恋をしています。
…絶対叶わないと確信してるけど。
なぜなら私は重症者。
持病の名前は『恋愛挫折症』――。





「…なーんて、ね」

いつも通りの学校帰りに、脳内で一人ナレーション入れてみる。
我ながら下らないことを考えているなァと、軽くため息をつく。
でも、事実だし。
今まで好きになった人にはことごとく彼女が出来たり転校されたり。
コクる暇もなく、即終了。
…で、今回は何かといえば。

「…宇宙人だもんなぁ〜…」

性別だの年齢だのそういうのすっ飛ばして、種族どころか出身の星が違う。
しかも相手が地球人型ならまだしも、円と曲線で構成されているようなぬいぐるみサイズの二頭身。
………ってか、蛙。
問題ありまくりにもほどがある。

殿!」

一陣の風とともに、目の前に現れる青い影。
噂なんてしてないのに、なんてタイミングがいいんだ。この蛙は。
まったく、アサシン…もとい、忍者に惚れるってのは厄介なことらしい。
しかし、周囲に他人がいなくて良かったと思う。
アンチバリアとやらのお陰で身内以外には見えない彼らに、人目のあるところでは話しかけられない。
足を止めて、青い影に話しかける。

「よ、ドロロ。今日もパトロール?」
「地球の平和を守るためには欠かせないことでござるからな!」

にっこりと笑うドロロ。
…この笑顔は反則だ。
こうやって笑いかけられるたび、どうしようもないほど惚れていく自分がいる。

「…殿?どうかしたでござるか?」
「ん?あぁいや、なんでもないよ。ちょっとぼーっとしてた」

心配そうな顔。
そんな顔して欲しくないけど、自分を心配してくれてると思うと嬉しくなる。
矛盾してるけど、仕方ない。
要は、私はどんな彼でも好きで好きで仕方ないのだ。

「帰るね。ドロロもパトロールの続きあるでしょ?」
「もう終わるところでござる。送るでござるよ」
「…ありがと、ドロロ」

並んで歩き出す。
どきどき、どきどき。
心臓が高鳴る。
何か話したいのに、何も言えない。
何か言葉を紡いだら、思いを口にしてしまいそうで。

殿、どうしたのでござる?」
「…ん?」
「心の臓の鼓動が、早まっておられるでござる」

…そんなことまで分かるのか、忍ってやつは。
つくづく、忍者に惚れるってのは難儀なことらしい。

「分かっちゃう?」
「忍でござるからな」
「そっか…まいったね」

――私は『恋愛挫折症』。
どんな恋愛も、上手くいった例がない。
…ハナっからコケるって分かっているのなら、当たって砕けてみましょうか。

「…あのね、あたし…ドロロのことが、好き」

正面を見たまま、言う。
隣を歩いている彼の表情は見えない。
無言の状態が続く。
息が苦しくて…逃げ出したくなる。
苦しくて苦しくて、涙が一粒こぼれた。
…と、ケロン人独特の足音が消えて、ドロロが立ち止まったのが分かった。

殿」

呼ばれて、振り返る。
水色の目が、まっすぐに私を見ていた。

「拙者も、殿のことが好きでござるよ!」

そう言ったドロロの顔は、すごく幸せそうで。
青い顔を赤くしている姿が、すごく可愛くて。
好きといってくれたのが…嬉しくて。
私は思わず彼を抱きしめた。

「好きだよ、ドロロ…」
殿…」

嬉しくて、幸せで、もう一粒涙がこぼれた。





私は恋愛挫折症。
どんな恋も、コクる暇なく即終了。
でも、それも今日まで。
恋のお相手は宇宙人だけど、両想いになれたから。
私はドロロが好きで、ドロロは私が好きだから、

病気克服、ってことで、どすか?















fin




atogaki
 ホワイトデーフリー小説、ドロロ兵長夢でした〜!
 …めっちゃ遅れてる上にホワイトデー関係ないorz
 3/31までフリー配布。配布終了しました。
 お持ち帰りしてくださった方ありがとうございます☆ノシ
 では、今後も【ふるからー・すたいる】をよろしくお願いします!