今日こそ、今日こそ。

…って思い続けて、もう何ヶ月経ったことやら…。










最強笑顔。










「あーもー!!の馬鹿馬鹿馬鹿〜〜〜っっっ!!!」

叫びながら、携帯を枕に叩きつける。
今日も失敗したのだ、告白に。

「…何回チャンス逃せば気が済むんだよ自分〜…!」

誕生日、クリスマス、バレンタイン、ホワイトデー。
恋愛イベントが用意されていそうな記念日は、ことごとく過ぎ去って。
残ったのは、なんにも変わらない自分だけ。

「ホントに、何で好きになっちゃったかなぁ!!?」

ぼすぼすと、ソバガラの枕を殴る。
そう、ムカつくぐらい好きなのだ。
いっっっつもニコニコ無敵スマイルを浮かべているあの男が。
…麻生英雄牧師が。

「麻生なんて、麻生なんてっ、大ッ………き…」

そこで、固まる。
嫌いなんて口が裂けたって言えやしない。
好きだと気づいた瞬間から、この心は彼のモノだ。
…苦しくて苦しくて仕方ない。
『好き』と、その一言が言える勇気が、欲しい。

「一人のときは、言えるのになぁ…」

好きだよ、麻生。
口の中で呟く。

「麻生〜…」
「呼びました?」

一瞬、固まる。
勢い良く振り返ると、そこには、今一番会いたいようで会いたくない男が立っていた。

「あ、あ、麻生…!!!??」
「ハイ」
「ちょっと待って!?ここあたしん家!!あたしの部屋!!何でアナタがココにいるの!!!??」
「お母様に、さんが忘れ物をしたので届けに来た、って言ったらあっさりと」
「そんなん玄関先でいいじゃないか!!何やってんだよ母―――!!!」

…ん?
いやいやちょっと待て。
あたしは教会に忘れ物なんてしていないはずだ。
財布と携帯ぐらいしか持って行かなかった。
携帯はさっき枕に叩きつけたし、教会からの帰り道でジュースを買った。
ってことは、だ。

「…麻生さん、嘘…ついたっスね?」
「嘘なんてついてませんよ。ほら、ここにあるじゃないですか、忘れ物」
「? どこ?」
「ここですよ、ココ」

そう言って、あたしを指差す。
…はィ?

「…どういう意味でせう?」
「忘れ物をしているでしょう?」
「いや、だから何を」
「僕への想い、ですよ」
「…へ?」

きっと今、とんでもなく間抜けな顔をしていると思う。
この男はなんと言った?
あたしの、麻生への想いが…どうしたって?

「もうそろそろ、言ってくれてもいいでしょう?待ちきれなくて来ちゃいましたよ」
「え?あ?はぁ?」
「そんなに気が長いほうでもないんですよ、こう見えて」

ゆっくりと近づいてくる麻生。
半ば本能的に後ずさる。
この男の笑顔が…今、とてつもなく、果てしなく…怖い…。

「あの〜…さっきから聞いていると、どうにもワタシのキモチはとっくにアナタにばれてたと…」
「そういうことになりますかね」
「…マジかよ」
「ね、言ってくれてもいいでしょう?それとも、僕から言いましょうか?」
「な、いや、ちょ、待っ」



「好きです、さん」



視界が塞がれる。
口付けられたと気付いたのは、目の前でいつも以上の微笑みを見せる男の顔を見てからだった。
そりゃもう、にーっこりと、極上の笑顔の笑顔の麻生を。
この状況下であたしが何を出来るかといえば、顔を真っ赤にして口をぱくぱくさせることぐらいで。

「貴女も言ってくれますよね?」

凶悪スマイル。
…参りました。負けました。I'm a loser。
一生、あたしはこの男に勝てる気が致しません。



「あたしも、…麻生が、好きです」





負け犬と罵るがいいさ。
こんな男に惚れてしまったあたしが悪い。



…何にせよ、告白成功、両想い!なわけだし、ね。















fin




atogaki
 ホワイトデーフリー小説、麻生夢でした〜!
 …めっちゃ遅れてるしorz
 3/31までフリー配布。配布終了しました。
 お持ち帰りしてくださった方ありがとうございます☆ノシ
 では、今後も【ふるからー・すたいる】をよろしくお願いします!